第3回 「見える化」で生産の効率化を図る

1.作業の見える化で生産性を高める

生産現場では様々な問題が発生します。想定外や計画外の不具合、遅延や抜け漏れ、クレームや事故などが発生します。コストの問題、納期の問題、品質の問題、安全の問題、顧客満足の問題などの要因が日常的に生産現場で発生しています。
生産能力の高いといわれるトヨタの現場から毎年数多くの提案が出ていることは、優良な強い現場でも多くの問題を抱えていることを示しています。現場力の高い企業は、これらの問題を迅速で的確に解決していける組織と人が活躍して職場を維持しています。
 現場の見える化は問題に対した適切な手が打てる第一歩です。

2.現場で起きていることを日報で伝える

各社ともに現場で起きている重要なことはスタッフや経営者に情報として伝達されています。あらかじめ想定された情報は、全社に伝えられるシステムがあり、処理が行われています。想定された抜けや漏れは、それがチェックされ、原因が分析され、対策が打たれる手順がマニュアルで決められています。
しかし、今の環境変化は今まで経験したことがない新しい変化です。過去の経験を踏まえて戦略が本当に実現するかどうかを確かめるためには、想定していることだけでなく想定していない変化を見つけて把握し、変化に対応していかねばなりません。
企業は、ちょっとした変化、些細な出来事、微妙な違和感を全員に伝えていくシステムが必要です。
この役割を果たすのが「日報」です。その日現場で起こったこと、それにどのように対応し、どのように感じ、考えたかを全員に明らかにしていくことが必要です。
これが週単位では間延びしてしまい、時間単位では作業に支障が出かねません。日単位が一番現実的なのです。各社は日報を作成していますが、これを有効活用するための工夫が必要です。
紙ベースの日報は全員に伝達するのは時間がかかります。口頭での報告は蓄積性と保存性がありません。そこでITが有効な手段になります。

システムさえ作ってしまえば、携帯からでも入力できます。蓄積した情報を後から検索してピックアップしたり、並べ替えたり、必要な項目だけを抜き出すことは簡単です。紙の情報と異なり、再利用性が高いことが最大の利点です。

3.生産性を「見える化」する

製本業は、需要低迷に加えて、受注ロットの少量化と短納期化も増加しています。
生産コストを常に把握して、効率的な生産を確保しているかどうか確認していく必要があります。「生産性は、生産効率を計る重要な指標です。生産計画をたてて実行していく段階で、計画と実績との対比のために生産性を活用します。
生産性(産出量÷投入量)には、原材料生産性(生産量÷原材料使用量)、設備生産性(生産量÷機械台数または生産量÷機械運転時間)、労働生産性(生産量÷従業員数)があります。
製本工程は、設備生産性と労働生産性を用いて計画と実績との対比を行います。
作業能率は作業者一人一人の能率です。作業者の能力と努力で変わってきます。
作業能率(計画工数÷正味実績工数)で表され、実績工数は作業表や作業日報から把握できます。

稼働率は、実際に作業している時間が稼働時間であり、全体の作業に占める時間が稼働時間です。手作業の多い製本工程では稼働率の向上が重要です。動作速度を増すことができれば稼働率向上に結び付き、生産性向上につながっていきます。

3.基準生産量の見える化

生産量を考える時、現有能力でどの程度の生産ができるかの「基準生産量」が必要になります。
基準というものさしがあって、基準どおりにいかない異常や問題点が認識されます。
 基準生産量を確保するためには、
「標準作業」を明確化することが必要です。各社は作業マニュアル作成していると思いますが、宝の持ち腐れになっていないでしょうか。マニュアルに改善点があれば、直ぐに改定していく。これが改善を実践している証拠になります。標準は改善すべき点があれば変更していくべきものです。

4.実績を「見える化」する

①実績は日報で把握する
作業実績は、「IT日報」を活用します。個人別作業日報により作業者一人当たりの作業能率、稼働率を測定していきます。
作業日報で得られるデータは、個人別の生産数、個人別勤務時間、不良率、作業条件などを含めます。
 厳しい経営環境では、個人別作業日報により個人別作業管理を強化していくことが生産性を高める唯一の方法になります。

作業日報は、作業の進度管理、仕掛品・在庫などの現物管理、生産能力などの余力管理の生産統制にも重要なデータになります。また、どの程度のコストがかかっているかの原価計算や個人の賃金計算にも活用することができます。
作業日報は細かな作業内容が書けるものにします。この内容がないとデータとして役立ちません。

②進度管理を「見える化」する
 進度管理は、日程計画で示された作業が、予定通り順調に進んでいるかを調査して、遅れている場合は迅速に遅延対策をとり予定進度を確保することです。
進度を「見える化」するためにガントチャートがよく用いられます。
横軸に日付目盛をとり、生産数量や作業時間について計画に対して実績がどのように進行しているかが見える表です。

また、累計生産量と稼働日数のグラフを作り、計画と実績を対比していく方法も多く用いられています。

③納期遅れを改善する
納期遅れの原因は、「飛び込み受注が多い」「無計画で生産が混乱している」「納期間際の残業が多く、効率が低下」「多品種少量生産」「段取りや運搬作業が多く、稼働時間の効率化が図れない」などによります。
これは計画の作成と標準作業の「見える化」で解決できます。日程計画表を作成し、作業者別、製品別、機械別(工程別)に標準時間を設定し、作業の着手時と完了時を「見える化」して管理していきます。納期の短縮は絶対可能であるという信念を全員が持つことが重要です。

④飛び込みと短納期の対策をとる
 製本業では、「飛び込みの仕事」と「短納期」が多いため、あらかじめその対策をとっておきます。
飛込み仕事への対策は、「飛込み仕事量を予測し、生産計画にその枠を確保しておく」と「飛込み用の生産ラインを作る」の二つです。
飛び込みの仕事を生産計画に組み込むのは、生産に余裕を生むことになるため、全体の10%以下に抑える必要があります。
短納期は、通常の生産期間より受注期間が短い場合のことです。優良顧客から無理を承知で受注した場合です。
この対策は、「生産計画で枠を作る」「生産計画に上積みし、残業や外注で処理する」「急がない仕事を後回しにする」などがあります。いずれの対策も、生産能力以上の計画を立てないことが必要です。
また、ITを使ったカムアップシステムとして受注番号毎に納期の何日前かの情報を表示し、納期3日前で生産予定に組み込まれていない場合は、赤色で表示したり点滅させたりして注意を促します。

5.多品種少量生産の品質管理の「見える化」

多品種少量生産では、仕様が多岐にわたるため、品質管理が最優先となります。一般に、納期優先のために品質がおろそかになる場合が多く見かけられます。納期の切迫により作業ミスは増加します。短納期が多い場合は、品質問題が見つかるのは後のことで対策が後手に回ることが多くなります。
品質データの整理に即効性を持たせ、問題を次工程や明日に残さないことです。
品質管理は、「顧客の要求に適った品質の製品を経済的に作り出すこと」です。「不良品は出さない」という精神的な管理とQC手法を用いた管理の両面を並行的に進めていく必要があります。
精神的対策は、「トップが品質第一主義に熱意と理解を持つ」「全員が品質意欲を高め次工程は顧客であると考える」ことです。
この意欲があれば、品質は自然によくなるものです。
QC活動を定着させるためには、作業の標準化、チェック・検査の重視、作業者の訓練、不良品再発防止の対策を基本チェック項目として活動を進めることです。
 不良品対策は、データの蓄積と不良品の「見える化」が重要です。

M社では、検査制度が確立されており、品質に関するデータも一応整備されています。しかし、部分的な品質管理で全社的な取り組みが不足しており、不良品の発生は減少していませんでした。
そこで、品質管理を強化するために、品質管理の主担当を決め、そこに検査記録や不良品のデータを集め、全員に「見える化」しました。また、不良品検討委員会を作り、原因究明、対策を検討するようにしました。
 その結果、迅速な解決が可能になり、不良品も減少しました。

6.異常の見える化で問題を早期に解決する

 「見える化」で直接的に効果が高いのは「異常」を「見える」ようにしてしまうことです。誰が見ても異常とわかる状態にすれば即座にその対策を講じなければならなくなります。一般に異常は隠してそのままほったらかしにする場合が多いのです。生産現場は種々の異常が発生し、その対策が必要です。「小さな異常」に気がついて対処することで「大きな異常」の発生を防ぐことができます。異常という「現物」を「見える化」することが問題解決の第一歩です。

K社は、作業標準を作り、それより大きな差がある場合は、日報で赤字が出るような仕組みにしました。赤字が出たものについて原因を調べ、改善策を講じます。定着までに、時間はかかりましたが、改善意欲は高まりました。

「異常の見える化」で重要なことは、異常や問題の根本的な要因が見えるようになることです。真の原因を見つけ出すために必要な情報やデータが全員に「見える化」されていることが重要です。詳細な情報まで「見える化」することにより、真の原因が分かり、現場の知恵や創意工夫が生まれてきます。
S社は、「収支日程表」を「見える化」して、日次収支管理を高めています。
受注別に標準時間を設定し、各受注単位でどの程度のコストがかかったかを全員でチェックします。
一週間に一度程度話し合いの場を設けて、目標数字に対してどのような結果となっているかを確認し、今後の改善について全員で話し合います。

7.効果の見える化でモラールを高める

改善効果を「見える化」することは職場改善に大きな効果があります。異常や問題に対してどの対策が効果的であったかを検証することが必要になります。
「効果の見える化」は職場のモラールを高める効果があります。成功体験は人の育成に大きなプラス効果があります。目標達成の喜びを共有することが重要です。

G社は、改善活動が日常活動に組み込まれています。
作業者はロット単位で作業の終了した時間を記録し、標準時間と比較して作業効率がどれだけ改善したかを認識し、その理由を明らかにします。そこから、改善効果が明らかになってきます。効果を記録するのは改善の基本です。記録がなければ、効果がどの程度上がったかもわかりません。記録を残すことは「見える化」にもつながっていきます。

8.「見える化」を効果的にするために

 「見える化」を効果的に使えば、改善が促進できることを見てきました。しかし、「見える化」だけでは問題は解決しないことも考慮する必要があります。「問題の見える化」から、解決策を考え、実行して初めて効果が上がるのです。
「見える化」では、目的を明確化し、「見せたくないもの」ほど「見える化」することが重要です。
しかし、見える化により、問題点の原因が個人攻撃に結びつく危険性もあります。「見える化」は効率のよい、よりよい職場にする手法であると考える職場風土の醸成が必要になります。

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第4回 営業の強化で顧客満足を達成する

 営業活動では、顧客のニーズや要望が明確に見えているかが重要です。「顧客の声」は経営にとって重要な経営資源です。顧客情報を「見える化」し、全社を挙げてその声に耳を傾け、顧客満足を達成していくことが、顧客第一主義の経営の第一歩です。

1.情報を販売に生かす

顧客の情報を全社で共有することは営業活動の出発点です。顧客のニーズや競合他社の動きが見えてくれば、新商品や新サービスなどをつくるヒントが生まれてきたり、顧客満足を高めていくアイデアが生まれてきます。

 営業が顧客から入手した生の情報は部署の異なる生産現場には浸透しにくいものです。ITを用いて顧客のニーズやクレームを情報システムとして全社で共有できれば、営業の要望は毎日嫌でも見ることになります。

B社では、顧客別の注文実績とコストが見えるようになっています。また、顧客に対しての注意点がわかるようになっています

2.クレーム情報は顧客確保の柱です。全社でこれに対応します

クレーム情報は重要な資産になります。クレームへの対処が不十分であれば、すぐ顧客を失います。顧客の満足する対応をすれば信頼関係は深まります。クレームはビジネスチャンスです。営業と生産現場が一体となって対応しましょう。

IT日報はこの点でも有効な情報伝達手段になります。営業から頻繁にクレームが出てくれば、生産現場も対応せざるを得なくなるでしょう。顧客満足を達成したいのは営業も生産現場も同じです。

G社は受注先別管理表を用いて、営業の情報を共有化しています。

管理表は、受注予定時期と受注確度(受注済、受注確実、受注有力、有力情報、情報段階、保留案件)が表示され、見込み案件が集計され、金額や件数、数量などが把握できる仕組みです。データは日々入力されIT日報で最新の状況にアップデートされ、予測精度を高めていきます。これにより、営業だけでなく仕入部門、製造部門、開発部門、物流部門なども、今後の受注に対して先行して対応が可能になりました。

いまは種々の情報が私たちの周りにあふれています。しかし、本当に役立つ情報は限られています。情報を整理し、活用していくことが必要です。

「顧客の見える化」は生産現場でも必要です。顧客対応は全社で対応していかなければなりません。顧客にとってはだれが対応してもその会社の接点なのです。顧客からの問い合わせに的確な対応ができなければ顧客を失うことになりかねません。この点からも顧客情報の共有化は必要なのです。

H社は顧客情報が社長の耳に入ってきており、顧客情報が朝礼で伝えられていたが、情報がばらばらで現場は聞く耳を持たなかった。現場での情報責任者を決め、顧客情報をデータベース化しました。

この結果、顧客の要求していることが整理され、「情報の垂れ流し」状態が解消されました。

3.顧客データベースで業績を向上する

顧客のデータベースは、顧客の囲い込み、顧客の拡大、新商品の開発など営業の大きな資産になります。顧客情報は、顧客プロフィールから、全社での顧客とのやり取り、発生したクレームや顧客の要望、それへの対応結果、さらに顧客から発生した案件や物件の状況など、さまざまな情報がシステムに蓄積・保存されていきます。顧客にはまだ取引のない見込み段階の顧客や注文を失った顧客も含めます。過去のデータを見直して今後の傾向を推定することもできます。

ここで重要なことは、蓄積した情報を様々な角度から見たり、 検索できることです。個々の顧客情報ページの中だけでなく、全体の顧客情報ページを項目で検索することにより、蓄積情報をより有効に活用できます。

 4.販売計画の重要性を認識する

「中長期の販売計画は相手があることで相手の計画はわからないので計画は立てられない」「変更が多くて計画を立てるのはムダだ」と考える経営者は多いと思います。しかし、販売計画は生産計画を作るための重要な資料になります。そのため、顧客のデータベースを整理しておくことは、将来の対策のためにも必要です。

顧客データの傾向から要求ニーズとトレンドを把握し、販売計画に反映します。

製本業の需要減少対策として、従来の製本のみではなく川上、川下などに事業を拡大していくことを考えるでしょう。変革モデルの、「川上ワンストップ型」「川下ワンストップ型」のワンストップサービスの流れを作っていくときに、顧客からの要求を整理し、ワンストップサービスのどの部分が自社の強みで、どの部分が他社の協力が必要であるかを的確に把握することができます。

社長の想いを実現するためには、経営ビジョンに従った販売計画を作ることが重要です。今後の方針を社長の想いとして現場に伝え、現場が十分にそれを理解したうえで販売計画を作成していきます。

 D社では、ワンストップサービスの一つとしてインターネットで一般顧客から注文を受ける写真集ビジネスを始めました。製本業が最終顧客に商品を提供するサービスができたのは、IT・情報技術をいち早く取り込んだ成果です。

E社では、デザイナーとタイアップして、自社ブランドの紙製品を立ち上げ、展示会等で自社製品を積極的にアピールしています。顧客は、従来の印刷業ではなくエンドユーザーへと広がりをみせ、今後の展開が期待できます。ベースにあるのは、製本で培った紙加工技術です。

5.販売計画はトップが主導する

 企業が伸びるか、伸びないかは、トップで決まります。販売計画の作成は、社長の想いを末端まで浸透させ、現場の意見を聞きながら作成していきます。

販売計画を作成する際には、商品力(品ぞろえ、商品開発)と営業力(営業、顧客満足達成力)で他社との差別化が何かを考えて、差別化できる分野に重点志向することが必要になります。

差別化のポイントは「品質・技術を売る企業になる」「価格競争の少ない顧客サークルを作る」の二点です。商品力で顧客の信頼を失うと二度と顧客は戻ってこないと考えるべきでしょう。

「価格競争の少ない顧客サークル」を形成するには、「独自性・利便性・密着性」を強化することです。商品力で自社の独自性を高め、顧客に利用してもらいやすい環境を整備し、顧客の囲い込みを実施し、顧客を価格以外の要素で取り込んでいくことが大事になってきています。

F社では、余剰の倉庫スペースを売りにして顧客商品の在庫管理を製本と合わせて受注することにより、受注量を増加させています。

G社では、独自の技術で環境に配慮した製本方法を創出し、業界紙などにも広く取り上げられ、売り上げを伸ばしています。

6.マーケティング計画を策定する

マーケティングは売れる仕組み作りです。販売は、商品と対象市場を持ち、それをどのような方法で売り、どのようにして顧客に買ってもらうかの活動です。需要が変化している中で、最も売れそうな顧客に対象を絞り、顧客のニーズを把握し、より効率的な販売を行っていきます。

 顧客満足は、「顧客の欲しい時」「欲しい商品を」「欲しい価格で」「欲しい量だけ」「欲しいサービスで」「欲しい提案」を行っていくことです。

 このためには、顧客の満足する商品、価格、納期、販売促進が必要です。

7.営業数値計画はトップダウンで策定する

営業数値計画には販売予算と費用計画があります。販売予算は、販売目標を商品別、顧客別、部門別、担当者別などに数値化したもので、金額と数量を立案します。費用計画は、商品原価、物流費、販売費、その他営業経費になります。

スピード経営の時代は、トップダウンで環境変化に対応した迅速な決断が必要になります。

 成功している企業は優秀な経営者と優秀なリーダー、優秀な社員が活躍しています。このような企業の人材は、「成功するコツ」をつかんでいます。どのような小さなことでも、成功体験があると人材は育つものです。小さな成功例づくりをし、小さくても成功体験を大事にしましょう。成功例は、システムに蓄積し誰でもいつでも見れるようにしていきましょう。

8.商品を分類して、戦略商品を作り出す

顧客により注文の内容は大きく異なってきます。商品区分を行い、品ぞろえを増加させていきます。

商品を、「売上に占める割合は低いが付加価値が高いA商品」「最も売れているB主力商品]「理由があって安いというC商品」の三つに分類します。商品区分を有効活用するためには、商品別採算管理が必要になります。個々の商品がどの程度利益があるのかわかる必要があります。商品別の採算管理以外に、顧客別、受注単価別に年度単位で売上構成比を「見える化」します。

一般にA商品が20%あれば全体として利益を上げることができます。A商品を徹底的に強化していくことが必要になります。商品を分類する分析手法としてABC分析があります。ABC分析は、全商品群を売上金額順で並べ、例えば、売上累計構成比が80%の商品をAランクとし、80%から95%までをBランク、残りの5%をCランクと位置づけます。「Aランク」商品は、主力商品ですが、特定の顧客からの注文に偏っており、顧客の状況変化や商品に不具合が起った時などは、売上が極端に減少することになります。受注が減少しない顧客対策が必要です。顧客対策はこの部分に集中します。

B商品は二十~二十五%の売上構成であり、この中からAに上がりそうな商品を見つけることが重要です。

C商品は売上構成が五%程度です。新規商品やテスト商品などはCに位置付けます。Cから将来の利益の源泉になりそうな商品を見つけ出すことも検討していきます。

ABC分析は、重点管理であり、必ずしもすべてのケースに適用できるとは限りません。

製本業で取扱い品目をみる場合、保有する機械によっておのずと商品別ランクが決まってしまうことが多いと思われます。例えば無線綴じラインを2ライン保有して書籍製本をメインにしていれば、無線、アジロがAランクで90%を占めます。

そこで無線、アジロの製品をそれぞれ粗利の小さい順に並び替え、逆に利益を圧迫している商品を分析します。得意先によるのか、トラブルなどの特殊事情が影響しているのか分析します。

マーケティングは、「大量消費」のマス・マーケティングから「個」のマーケティングに大きく変化してきています。

これから成功する企業は、どうすれば顧客満足が達成できるか、どこで他社との差別化ができるのか、どうしたら優良顧客を確保できるのかなどの仕組みを構築していく必要があります。

9.営業の見える化を推進する

 製本業は、顧客を回っていれば、顧客を待っていれば、注文が入る時代ではありません。付加価値のある「売れるモノ」でないと売れません。これまでの営業を変えていく必要があります。

製本業は下請けが多いため、営業は経営者自身という場合が多くなっています。また、営業員がいても十分な効果が上がらないため、営業員の育成をあきらめている場合も多いのではないでしょうか。

 営業のやり方を変えるためには「営業の見える化」が必要です。

最初に、どんな営業をしているのかを「見える化」します。それをもとに「標準プロセス」を作ります。「見込み客のリストアップ」をし、メールや電話で訪問の日時を設定します。訪問して相手のニーズを引き出します。顧客ニーズに適った提案をし、見積書を作成します。

 この過程を営業全員がわかっていることが「見える化」です。

顧客回りでは常に顧客のニーズ・ウォンツをキャッチアップすることを念頭におきながら、製本・後加工についての情報を提供していくことが必要です。

また、特殊折りやミニ折り等、自社で得意とする技術を用いて最終商品に付加価値をつけるアイデアをデザイナーとタイアップして顧客に営業する、iPad等の電子端末を使って顧客にプレゼンテーションする等の演出も行ってみてはいかがでしょうか。

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第5回 人の力を最大限に発揮する

「社長の想い」を実現していくのは人です。全社に社長の思いを浸透し、その目標に向かって各人が最大限の能力を発揮できるように人を育成していくことです。経営者は人材育成が大切であることを理解し、育成に積極的です。しかし、すぐに結果が出るわけではありません。忍耐強く育成を図る必要があります。

中小企業は経営トップと従業員が一本の線で結ばれており、小人数で開発から調達、購入・生産・マーケティング、財務などの業務を一括して担当することが多くなります。個人個人が重要な仕事を任されるチャンスは多くあります。成功体験を得る機会も多く、技能・能力も蓄積されやすいことになります。したがって大企業にない特殊な分野の開発や事業化ができやすいといえます。教育・訓練によって、自発的に社長の想いを実現できる人を育てていけば結果は付いてきます。

目標達成には、顧客要求を瞬時に商品化する力、マーケティング能力、特殊分野、ニッチ市場で勝負できる力を持つ人材を育成し、その人材を育てる環境が必要です。

この目的のために「目標管理」があります。

1.目標管理で職場を変える

目標管理は、「会社の目指すものと個人が目指すものを摺り合せて、それぞれの従業員の自主性を重視しながら、業績向上を目指していくもの」です。

目標管理は、従来の上司の指示100%に従って働く上司の管理から、各従業員が自分で自分を管理することにより経営への参画意識を高めることが大きな目的です。  目標管理により、従業員のやる気が高まり、仕事に対して前向きな組織になっていきます。

高い目標の設定で能力の高い人材の育成が可能になります。また、計画的な育成もできるようになります。

2.「目標管理カード」を作る

目標管理は、目標管理カードを作成して、管理していきます。カードに記入する内容は、

①課題:各従業員が何をするべきなのかの具体的内容

②達成方法:目標達成のための具体的な行動

③達成水準:達成目標の内容

④期日:いつまでに達成するか

⑤重要度:すべての目標の合計を100とした比率

⑥自己評価:目標への達成度

⑦上司評価:目標への達成度

などです。

3.目標設定は「社長の想い」を具体化していく

目標設定は、「社長の想い」を具体化したものです。「売上高の拡大」の社長の想いに対して、部長は「売上高○億円の達成」、課長は「既存商品で売上の拡大」、担当は「不良品ゼロ」「生産性の向上」など連動した計画を立てます。

上位目標と連動しなければならないといっても特殊な業務や仕事を探し出す必要はありません。日々行っている業務の中から探し出せばよいのです。常に改善を意識して業務を行っていれば、課題は容易に見つかります。」

4.目標管理はPDCAサイクルを実践する

目標管理は、結果が直接実績に結びつくことが重要です。

PDCAサイクルの中でC)チェック)とA(アクション)に力を入れます。

表1

P社では、表1のような目標管理カードを作成し、具体的な行動を常に意識しながら仕事に取り組むことにしています。チェックの際は、何がよくて目標に近づいているか、なにが悪くて目標に達していないかを確認させています。その結果を行動に移すことで、PDCAサイクルが回るように工夫しています。

Q社では、目標を決算数字と一致させるようにしています。書式は効率のよいように何度か改良し、発表会を全員が行うようにしています。発表することで、目標を全員に約束することになり、約束は実行しなければならないという気持ちが高くなってきます。社長や部門長の考え方や優先度に合わせた目標が理解されるようになり、皆の気持ちもまとまってきています。

N社では、年度ごとに三つの目標を立てさせます。目標を行動に移すために、具体的な行動を六つに落とし込ませています。そして「C」段階でチェックさせます。何がよくて目標に近づいているか、何が悪くて目標に達していないかを確認させ、そのチェック結果を直ちに行動に移すようにしています。

5.目標管理の結果から人事評価の基準を明確化する

目標管理の結果を人事評価に活用します。目標管理表には自己評価と上司評価の枠を設定します。目標管理表の各項目の評価シートを作成し、評価している企業もあります。

W社では、目標管理表の必要な項目を網羅した「評価シート」を作成し、○、△、×で評価しています。このシートは、本人が記入し、上司との面接で一つずつ確認していきます。期半ばの面接で△の項目を達成することができなければ期後半も目標達成が難しくなります。これにより、目標として何をすればよいかが明確になり、目標管理が定着しました。

6.人を育てる賃金制度を導入する

目標管理の結果から人事評価を行い、結果を賃金に反映します。

総人件費を抑えながら、従業員の確保、定着を図り、かつ士気を高めるためには、目標管理のような人事制度が効果的な方法になります。多くの企業が、賃金と能力や実績を連動させることにより、社員間に不公平感が発生しないように工夫しています。

Y社は、賞与をなくし、決算時に会社の利益を分配するかたちにしています。会社の業績が賃金に直接結び付くということを強く意識するようになり、目標管理項目も、より業績に結びつく項目に近づいてきています。

X社は、職務給制度と成果給制度の二つの賃金制度があります。

職務給は、仕事の内容が高度であるかどうかで評価します。成果給は目標管理の達成度で評価します。目標管理では、チームの業績で個人の業績でない場合が多いため、個人別な数字を出さずに評価します。生産現場では、標準時間の改善に貢献したことを評価します。

7.5Sで人を育てる

日常の業務の中から課題を見つけ出すために、5Sの定着が効果的な方法になります。5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」です。5Sは、職場の美化運動だけではありません。職場の改善ができて初めて5S活動が定着したことになります。

5Sは、「トップが率先して推進する」「全員参加」「時間内での活動」が基本です。これがないと定着に至りません。

①整理:不用品を整理することです。不用品伝票で不用品を処理し、職場のムダをなくしていきます。

②整頓:いるものを決まった場所に置き、いつでも使える状態にしておくことです。「モノの見える化」で、モノ探しと運搬のムダをなくします。

③清掃:身の回りや職場をきれいに掃除し点検することです。汚れの発生源を見極め、汚れのもとを断ち、清掃のムダをなくします。

④清潔:整理・整頓・清掃のムダがない職場を維持し、改善することです。

⑤しつけ:ルールを徹底して守ることです。ルールを守らないことにより発生する無駄をなくしす。

8.「見える化」は5Sから始まる

5S活動の推進は生産現場の「見える化」に結びつきます。

「見える化の定着」には、「三現主義(現場、現物、現実)で、自分の体で生産現場の変化を『視える化』する」「自分の五感と感性で問題の前兆やムダの発生を『観える化』する」「自分の頭を使って、問題やムダの原因を探し出し、問題の解決・改善対策、ムダ取りの方策を全員に『見える化』する」ことで効果を生み出します。

9.「作業標準化」と「教育訓練」で5Sを定着させる

5Sの定着には、全員が改善意欲を高める必要があります。そのためには、「作業の標準化」

図1

で基準を作り、「教育訓練」により改善への道筋を教え込みます。

「作業標準」がないと作業者による作業方法のばらつきが発生し、不良品発生し、多くのムダが生じてきます。

さらに検査が標準化されていないとクレーム品が検査をすり抜けて納品され、顧客の信頼を失うことになります。

品質レベルの高いモノづくりを支えてきたベテラン社員がリストラや早期退職でいなくなり、モノづくりのノウハウも消えていきます。技術、ノウハウを伝承するためにも作業標準書を作り、その見直しができる人材を育成していく必要があります。

作業標準書は、三月程度で習得できる初級技能、六か月から一年で習得可能な中堅技術に対して、技術者と経験のある作業者が協力して作成し、現場リーダーがOJTで教育します。

10.現場リーダーの責任明確化と日常基本行動を実践する

生産現場では、現場リーダー(小企業では社長の場合もある)のもとに基本行動を毎日確実に実践することが求められています。自分の作業に追われているリーダー、教育しないで作業を急がせるリーダー、不良品やクレームの発生は担当者の責任とするリーダー、このようなリーダーのいる生産現場は生産目標の達成は困難です。

現場リーダーは、「朝礼による作業指示」「生産現場のパトロールと観察」「トラブルやその前兆発見と暫定対策指示」「問題防止の再発防止と改善対策」「抜本的問題解決対策を検討・指示」の日常基本行動が求められています。現場リーダーなくして改善の推進は不可能です。

11.「報連相」で生産目標を達成する

ベテラン社員のみで生産していたときは、それぞれの作業者の判断で作業が進行したため、作業指示が必要なく、報告の義務も必要なく、トラブルが発生しても連絡なしで処理ができ、問題について相談することありませんでした。

パート、派遣社員が増加した今の生産現場では、作業指示が必要で、報告・連絡・相談は必須事項になってきました。作業指示書で作業項目と生産目標、作業の方法などを的確に指示し、報告・連絡・相談の順守を実施していきます。

R社では、社員一人ひとりが自分の終了した工程に印をつけて、自分の仕事の進行状況を知り、自主的に行動できるシステムを活用しています。社員の名前と工程名をバーコード化して、作業開始時と終了時にバーコードを読み込ませています。管理者は工場の進捗管理画面を呼び出し、ラインの稼働状況を把握することができます。

12.顧客満足と付加価値を生み出す品質保証を定着させる

変化変動する顧客の要求に対応して、競合に打ち勝つためには、企業の質を高めて行く必要があります。企業は、経営(経営ビジョンン、目標、計画)、管理(PDCAサイクル)、製品(顧客ニーズ、安全、適正価格)、人(モラール、能力、多能化、改善力)で質を高めていく必要があります。

企業競争に勝ち残る利益の確保できる生産現場は、「顧客の要求に柔軟に迅速に対応し、要求されたQCT(品質、コスト、納期)を達成し、利益が出ること」「品質保証活動が品質改善だけでなく、品質革新を追及している」「品質革新の品質保証活動は、QCTに加え、製品、安全、教育、管理の面の改革を行っている」ことで顧客満足の品質の実現を目指すことができます。

「品質は工程で作り込め」は、工程で早期に問題点を把握し、対策をとることです。「品質の創り込み」のために品質不良の対策として、人、機械設備、材料、方法、管理、お金の6Mの要因を徹底的に解明し、抜本的対策を打ちます。

13.利益を生む「人づくり」は多能化の実践である

多能化は、変化する顧客の要求に少人数で対応することです。従来の職場を固定したやり方では少人数で対応できない場合もあります。多能化により、忙しい職場と暇な現場が平準化されます。

生産現場で多くの多能化社員ができれば、フレキシブルな生産体制ができ、ローコスト生産が可能になり、やりがいのある明るい職場に変わっていきます。

多能化レベルの「見える化」は「スキルマップ」を用います。スキルマップにより、現状を把握し、多能化訓練スケジュールを作成して教育訓練を行っていきます。

多能化の推進は、トップが率先して多能化の意義を理解させ、会社の方針として職場全員で取り組む雰囲気を高めていくことが重要です。

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今や、IT化なくして経営課題の解決が困難になってきています。リーマンショック、東日本大震災と相次ぐ難題が降りかかる中、この連載が皆様のいくばくかのヒントになれば幸いです。

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