第4回 営業の強化で顧客満足を達成する

 営業活動では、顧客のニーズや要望が明確に見えているかが重要です。「顧客の声」は経営にとって重要な経営資源です。顧客情報を「見える化」し、全社を挙げてその声に耳を傾け、顧客満足を達成していくことが、顧客第一主義の経営の第一歩です。

1.情報を販売に生かす

顧客の情報を全社で共有することは営業活動の出発点です。顧客のニーズや競合他社の動きが見えてくれば、新商品や新サービスなどをつくるヒントが生まれてきたり、顧客満足を高めていくアイデアが生まれてきます。

 営業が顧客から入手した生の情報は部署の異なる生産現場には浸透しにくいものです。ITを用いて顧客のニーズやクレームを情報システムとして全社で共有できれば、営業の要望は毎日嫌でも見ることになります。

B社では、顧客別の注文実績とコストが見えるようになっています。また、顧客に対しての注意点がわかるようになっています

2.クレーム情報は顧客確保の柱です。全社でこれに対応します

クレーム情報は重要な資産になります。クレームへの対処が不十分であれば、すぐ顧客を失います。顧客の満足する対応をすれば信頼関係は深まります。クレームはビジネスチャンスです。営業と生産現場が一体となって対応しましょう。

IT日報はこの点でも有効な情報伝達手段になります。営業から頻繁にクレームが出てくれば、生産現場も対応せざるを得なくなるでしょう。顧客満足を達成したいのは営業も生産現場も同じです。

G社は受注先別管理表を用いて、営業の情報を共有化しています。

管理表は、受注予定時期と受注確度(受注済、受注確実、受注有力、有力情報、情報段階、保留案件)が表示され、見込み案件が集計され、金額や件数、数量などが把握できる仕組みです。データは日々入力されIT日報で最新の状況にアップデートされ、予測精度を高めていきます。これにより、営業だけでなく仕入部門、製造部門、開発部門、物流部門なども、今後の受注に対して先行して対応が可能になりました。

いまは種々の情報が私たちの周りにあふれています。しかし、本当に役立つ情報は限られています。情報を整理し、活用していくことが必要です。

「顧客の見える化」は生産現場でも必要です。顧客対応は全社で対応していかなければなりません。顧客にとってはだれが対応してもその会社の接点なのです。顧客からの問い合わせに的確な対応ができなければ顧客を失うことになりかねません。この点からも顧客情報の共有化は必要なのです。

H社は顧客情報が社長の耳に入ってきており、顧客情報が朝礼で伝えられていたが、情報がばらばらで現場は聞く耳を持たなかった。現場での情報責任者を決め、顧客情報をデータベース化しました。

この結果、顧客の要求していることが整理され、「情報の垂れ流し」状態が解消されました。

3.顧客データベースで業績を向上する

顧客のデータベースは、顧客の囲い込み、顧客の拡大、新商品の開発など営業の大きな資産になります。顧客情報は、顧客プロフィールから、全社での顧客とのやり取り、発生したクレームや顧客の要望、それへの対応結果、さらに顧客から発生した案件や物件の状況など、さまざまな情報がシステムに蓄積・保存されていきます。顧客にはまだ取引のない見込み段階の顧客や注文を失った顧客も含めます。過去のデータを見直して今後の傾向を推定することもできます。

ここで重要なことは、蓄積した情報を様々な角度から見たり、 検索できることです。個々の顧客情報ページの中だけでなく、全体の顧客情報ページを項目で検索することにより、蓄積情報をより有効に活用できます。

 4.販売計画の重要性を認識する

「中長期の販売計画は相手があることで相手の計画はわからないので計画は立てられない」「変更が多くて計画を立てるのはムダだ」と考える経営者は多いと思います。しかし、販売計画は生産計画を作るための重要な資料になります。そのため、顧客のデータベースを整理しておくことは、将来の対策のためにも必要です。

顧客データの傾向から要求ニーズとトレンドを把握し、販売計画に反映します。

製本業の需要減少対策として、従来の製本のみではなく川上、川下などに事業を拡大していくことを考えるでしょう。変革モデルの、「川上ワンストップ型」「川下ワンストップ型」のワンストップサービスの流れを作っていくときに、顧客からの要求を整理し、ワンストップサービスのどの部分が自社の強みで、どの部分が他社の協力が必要であるかを的確に把握することができます。

社長の想いを実現するためには、経営ビジョンに従った販売計画を作ることが重要です。今後の方針を社長の想いとして現場に伝え、現場が十分にそれを理解したうえで販売計画を作成していきます。

 D社では、ワンストップサービスの一つとしてインターネットで一般顧客から注文を受ける写真集ビジネスを始めました。製本業が最終顧客に商品を提供するサービスができたのは、IT・情報技術をいち早く取り込んだ成果です。

E社では、デザイナーとタイアップして、自社ブランドの紙製品を立ち上げ、展示会等で自社製品を積極的にアピールしています。顧客は、従来の印刷業ではなくエンドユーザーへと広がりをみせ、今後の展開が期待できます。ベースにあるのは、製本で培った紙加工技術です。

5.販売計画はトップが主導する

 企業が伸びるか、伸びないかは、トップで決まります。販売計画の作成は、社長の想いを末端まで浸透させ、現場の意見を聞きながら作成していきます。

販売計画を作成する際には、商品力(品ぞろえ、商品開発)と営業力(営業、顧客満足達成力)で他社との差別化が何かを考えて、差別化できる分野に重点志向することが必要になります。

差別化のポイントは「品質・技術を売る企業になる」「価格競争の少ない顧客サークルを作る」の二点です。商品力で顧客の信頼を失うと二度と顧客は戻ってこないと考えるべきでしょう。

「価格競争の少ない顧客サークル」を形成するには、「独自性・利便性・密着性」を強化することです。商品力で自社の独自性を高め、顧客に利用してもらいやすい環境を整備し、顧客の囲い込みを実施し、顧客を価格以外の要素で取り込んでいくことが大事になってきています。

F社では、余剰の倉庫スペースを売りにして顧客商品の在庫管理を製本と合わせて受注することにより、受注量を増加させています。

G社では、独自の技術で環境に配慮した製本方法を創出し、業界紙などにも広く取り上げられ、売り上げを伸ばしています。

6.マーケティング計画を策定する

マーケティングは売れる仕組み作りです。販売は、商品と対象市場を持ち、それをどのような方法で売り、どのようにして顧客に買ってもらうかの活動です。需要が変化している中で、最も売れそうな顧客に対象を絞り、顧客のニーズを把握し、より効率的な販売を行っていきます。

 顧客満足は、「顧客の欲しい時」「欲しい商品を」「欲しい価格で」「欲しい量だけ」「欲しいサービスで」「欲しい提案」を行っていくことです。

 このためには、顧客の満足する商品、価格、納期、販売促進が必要です。

7.営業数値計画はトップダウンで策定する

営業数値計画には販売予算と費用計画があります。販売予算は、販売目標を商品別、顧客別、部門別、担当者別などに数値化したもので、金額と数量を立案します。費用計画は、商品原価、物流費、販売費、その他営業経費になります。

スピード経営の時代は、トップダウンで環境変化に対応した迅速な決断が必要になります。

 成功している企業は優秀な経営者と優秀なリーダー、優秀な社員が活躍しています。このような企業の人材は、「成功するコツ」をつかんでいます。どのような小さなことでも、成功体験があると人材は育つものです。小さな成功例づくりをし、小さくても成功体験を大事にしましょう。成功例は、システムに蓄積し誰でもいつでも見れるようにしていきましょう。

8.商品を分類して、戦略商品を作り出す

顧客により注文の内容は大きく異なってきます。商品区分を行い、品ぞろえを増加させていきます。

商品を、「売上に占める割合は低いが付加価値が高いA商品」「最も売れているB主力商品]「理由があって安いというC商品」の三つに分類します。商品区分を有効活用するためには、商品別採算管理が必要になります。個々の商品がどの程度利益があるのかわかる必要があります。商品別の採算管理以外に、顧客別、受注単価別に年度単位で売上構成比を「見える化」します。

一般にA商品が20%あれば全体として利益を上げることができます。A商品を徹底的に強化していくことが必要になります。商品を分類する分析手法としてABC分析があります。ABC分析は、全商品群を売上金額順で並べ、例えば、売上累計構成比が80%の商品をAランクとし、80%から95%までをBランク、残りの5%をCランクと位置づけます。「Aランク」商品は、主力商品ですが、特定の顧客からの注文に偏っており、顧客の状況変化や商品に不具合が起った時などは、売上が極端に減少することになります。受注が減少しない顧客対策が必要です。顧客対策はこの部分に集中します。

B商品は二十~二十五%の売上構成であり、この中からAに上がりそうな商品を見つけることが重要です。

C商品は売上構成が五%程度です。新規商品やテスト商品などはCに位置付けます。Cから将来の利益の源泉になりそうな商品を見つけ出すことも検討していきます。

ABC分析は、重点管理であり、必ずしもすべてのケースに適用できるとは限りません。

製本業で取扱い品目をみる場合、保有する機械によっておのずと商品別ランクが決まってしまうことが多いと思われます。例えば無線綴じラインを2ライン保有して書籍製本をメインにしていれば、無線、アジロがAランクで90%を占めます。

そこで無線、アジロの製品をそれぞれ粗利の小さい順に並び替え、逆に利益を圧迫している商品を分析します。得意先によるのか、トラブルなどの特殊事情が影響しているのか分析します。

マーケティングは、「大量消費」のマス・マーケティングから「個」のマーケティングに大きく変化してきています。

これから成功する企業は、どうすれば顧客満足が達成できるか、どこで他社との差別化ができるのか、どうしたら優良顧客を確保できるのかなどの仕組みを構築していく必要があります。

9.営業の見える化を推進する

 製本業は、顧客を回っていれば、顧客を待っていれば、注文が入る時代ではありません。付加価値のある「売れるモノ」でないと売れません。これまでの営業を変えていく必要があります。

製本業は下請けが多いため、営業は経営者自身という場合が多くなっています。また、営業員がいても十分な効果が上がらないため、営業員の育成をあきらめている場合も多いのではないでしょうか。

 営業のやり方を変えるためには「営業の見える化」が必要です。

最初に、どんな営業をしているのかを「見える化」します。それをもとに「標準プロセス」を作ります。「見込み客のリストアップ」をし、メールや電話で訪問の日時を設定します。訪問して相手のニーズを引き出します。顧客ニーズに適った提案をし、見積書を作成します。

 この過程を営業全員がわかっていることが「見える化」です。

顧客回りでは常に顧客のニーズ・ウォンツをキャッチアップすることを念頭におきながら、製本・後加工についての情報を提供していくことが必要です。

また、特殊折りやミニ折り等、自社で得意とする技術を用いて最終商品に付加価値をつけるアイデアをデザイナーとタイアップして顧客に営業する、iPad等の電子端末を使って顧客にプレゼンテーションする等の演出も行ってみてはいかがでしょうか。

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