第3回 「見える化」で生産の効率化を図る

1.作業の見える化で生産性を高める

生産現場では様々な問題が発生します。想定外や計画外の不具合、遅延や抜け漏れ、クレームや事故などが発生します。コストの問題、納期の問題、品質の問題、安全の問題、顧客満足の問題などの要因が日常的に生産現場で発生しています。
生産能力の高いといわれるトヨタの現場から毎年数多くの提案が出ていることは、優良な強い現場でも多くの問題を抱えていることを示しています。現場力の高い企業は、これらの問題を迅速で的確に解決していける組織と人が活躍して職場を維持しています。
 現場の見える化は問題に対した適切な手が打てる第一歩です。

2.現場で起きていることを日報で伝える

各社ともに現場で起きている重要なことはスタッフや経営者に情報として伝達されています。あらかじめ想定された情報は、全社に伝えられるシステムがあり、処理が行われています。想定された抜けや漏れは、それがチェックされ、原因が分析され、対策が打たれる手順がマニュアルで決められています。
しかし、今の環境変化は今まで経験したことがない新しい変化です。過去の経験を踏まえて戦略が本当に実現するかどうかを確かめるためには、想定していることだけでなく想定していない変化を見つけて把握し、変化に対応していかねばなりません。
企業は、ちょっとした変化、些細な出来事、微妙な違和感を全員に伝えていくシステムが必要です。
この役割を果たすのが「日報」です。その日現場で起こったこと、それにどのように対応し、どのように感じ、考えたかを全員に明らかにしていくことが必要です。
これが週単位では間延びしてしまい、時間単位では作業に支障が出かねません。日単位が一番現実的なのです。各社は日報を作成していますが、これを有効活用するための工夫が必要です。
紙ベースの日報は全員に伝達するのは時間がかかります。口頭での報告は蓄積性と保存性がありません。そこでITが有効な手段になります。

システムさえ作ってしまえば、携帯からでも入力できます。蓄積した情報を後から検索してピックアップしたり、並べ替えたり、必要な項目だけを抜き出すことは簡単です。紙の情報と異なり、再利用性が高いことが最大の利点です。

3.生産性を「見える化」する

製本業は、需要低迷に加えて、受注ロットの少量化と短納期化も増加しています。
生産コストを常に把握して、効率的な生産を確保しているかどうか確認していく必要があります。「生産性は、生産効率を計る重要な指標です。生産計画をたてて実行していく段階で、計画と実績との対比のために生産性を活用します。
生産性(産出量÷投入量)には、原材料生産性(生産量÷原材料使用量)、設備生産性(生産量÷機械台数または生産量÷機械運転時間)、労働生産性(生産量÷従業員数)があります。
製本工程は、設備生産性と労働生産性を用いて計画と実績との対比を行います。
作業能率は作業者一人一人の能率です。作業者の能力と努力で変わってきます。
作業能率(計画工数÷正味実績工数)で表され、実績工数は作業表や作業日報から把握できます。

稼働率は、実際に作業している時間が稼働時間であり、全体の作業に占める時間が稼働時間です。手作業の多い製本工程では稼働率の向上が重要です。動作速度を増すことができれば稼働率向上に結び付き、生産性向上につながっていきます。

3.基準生産量の見える化

生産量を考える時、現有能力でどの程度の生産ができるかの「基準生産量」が必要になります。
基準というものさしがあって、基準どおりにいかない異常や問題点が認識されます。
 基準生産量を確保するためには、
「標準作業」を明確化することが必要です。各社は作業マニュアル作成していると思いますが、宝の持ち腐れになっていないでしょうか。マニュアルに改善点があれば、直ぐに改定していく。これが改善を実践している証拠になります。標準は改善すべき点があれば変更していくべきものです。

4.実績を「見える化」する

①実績は日報で把握する
作業実績は、「IT日報」を活用します。個人別作業日報により作業者一人当たりの作業能率、稼働率を測定していきます。
作業日報で得られるデータは、個人別の生産数、個人別勤務時間、不良率、作業条件などを含めます。
 厳しい経営環境では、個人別作業日報により個人別作業管理を強化していくことが生産性を高める唯一の方法になります。

作業日報は、作業の進度管理、仕掛品・在庫などの現物管理、生産能力などの余力管理の生産統制にも重要なデータになります。また、どの程度のコストがかかっているかの原価計算や個人の賃金計算にも活用することができます。
作業日報は細かな作業内容が書けるものにします。この内容がないとデータとして役立ちません。

②進度管理を「見える化」する
 進度管理は、日程計画で示された作業が、予定通り順調に進んでいるかを調査して、遅れている場合は迅速に遅延対策をとり予定進度を確保することです。
進度を「見える化」するためにガントチャートがよく用いられます。
横軸に日付目盛をとり、生産数量や作業時間について計画に対して実績がどのように進行しているかが見える表です。

また、累計生産量と稼働日数のグラフを作り、計画と実績を対比していく方法も多く用いられています。

③納期遅れを改善する
納期遅れの原因は、「飛び込み受注が多い」「無計画で生産が混乱している」「納期間際の残業が多く、効率が低下」「多品種少量生産」「段取りや運搬作業が多く、稼働時間の効率化が図れない」などによります。
これは計画の作成と標準作業の「見える化」で解決できます。日程計画表を作成し、作業者別、製品別、機械別(工程別)に標準時間を設定し、作業の着手時と完了時を「見える化」して管理していきます。納期の短縮は絶対可能であるという信念を全員が持つことが重要です。

④飛び込みと短納期の対策をとる
 製本業では、「飛び込みの仕事」と「短納期」が多いため、あらかじめその対策をとっておきます。
飛込み仕事への対策は、「飛込み仕事量を予測し、生産計画にその枠を確保しておく」と「飛込み用の生産ラインを作る」の二つです。
飛び込みの仕事を生産計画に組み込むのは、生産に余裕を生むことになるため、全体の10%以下に抑える必要があります。
短納期は、通常の生産期間より受注期間が短い場合のことです。優良顧客から無理を承知で受注した場合です。
この対策は、「生産計画で枠を作る」「生産計画に上積みし、残業や外注で処理する」「急がない仕事を後回しにする」などがあります。いずれの対策も、生産能力以上の計画を立てないことが必要です。
また、ITを使ったカムアップシステムとして受注番号毎に納期の何日前かの情報を表示し、納期3日前で生産予定に組み込まれていない場合は、赤色で表示したり点滅させたりして注意を促します。

5.多品種少量生産の品質管理の「見える化」

多品種少量生産では、仕様が多岐にわたるため、品質管理が最優先となります。一般に、納期優先のために品質がおろそかになる場合が多く見かけられます。納期の切迫により作業ミスは増加します。短納期が多い場合は、品質問題が見つかるのは後のことで対策が後手に回ることが多くなります。
品質データの整理に即効性を持たせ、問題を次工程や明日に残さないことです。
品質管理は、「顧客の要求に適った品質の製品を経済的に作り出すこと」です。「不良品は出さない」という精神的な管理とQC手法を用いた管理の両面を並行的に進めていく必要があります。
精神的対策は、「トップが品質第一主義に熱意と理解を持つ」「全員が品質意欲を高め次工程は顧客であると考える」ことです。
この意欲があれば、品質は自然によくなるものです。
QC活動を定着させるためには、作業の標準化、チェック・検査の重視、作業者の訓練、不良品再発防止の対策を基本チェック項目として活動を進めることです。
 不良品対策は、データの蓄積と不良品の「見える化」が重要です。

M社では、検査制度が確立されており、品質に関するデータも一応整備されています。しかし、部分的な品質管理で全社的な取り組みが不足しており、不良品の発生は減少していませんでした。
そこで、品質管理を強化するために、品質管理の主担当を決め、そこに検査記録や不良品のデータを集め、全員に「見える化」しました。また、不良品検討委員会を作り、原因究明、対策を検討するようにしました。
 その結果、迅速な解決が可能になり、不良品も減少しました。

6.異常の見える化で問題を早期に解決する

 「見える化」で直接的に効果が高いのは「異常」を「見える」ようにしてしまうことです。誰が見ても異常とわかる状態にすれば即座にその対策を講じなければならなくなります。一般に異常は隠してそのままほったらかしにする場合が多いのです。生産現場は種々の異常が発生し、その対策が必要です。「小さな異常」に気がついて対処することで「大きな異常」の発生を防ぐことができます。異常という「現物」を「見える化」することが問題解決の第一歩です。

K社は、作業標準を作り、それより大きな差がある場合は、日報で赤字が出るような仕組みにしました。赤字が出たものについて原因を調べ、改善策を講じます。定着までに、時間はかかりましたが、改善意欲は高まりました。

「異常の見える化」で重要なことは、異常や問題の根本的な要因が見えるようになることです。真の原因を見つけ出すために必要な情報やデータが全員に「見える化」されていることが重要です。詳細な情報まで「見える化」することにより、真の原因が分かり、現場の知恵や創意工夫が生まれてきます。
S社は、「収支日程表」を「見える化」して、日次収支管理を高めています。
受注別に標準時間を設定し、各受注単位でどの程度のコストがかかったかを全員でチェックします。
一週間に一度程度話し合いの場を設けて、目標数字に対してどのような結果となっているかを確認し、今後の改善について全員で話し合います。

7.効果の見える化でモラールを高める

改善効果を「見える化」することは職場改善に大きな効果があります。異常や問題に対してどの対策が効果的であったかを検証することが必要になります。
「効果の見える化」は職場のモラールを高める効果があります。成功体験は人の育成に大きなプラス効果があります。目標達成の喜びを共有することが重要です。

G社は、改善活動が日常活動に組み込まれています。
作業者はロット単位で作業の終了した時間を記録し、標準時間と比較して作業効率がどれだけ改善したかを認識し、その理由を明らかにします。そこから、改善効果が明らかになってきます。効果を記録するのは改善の基本です。記録がなければ、効果がどの程度上がったかもわかりません。記録を残すことは「見える化」にもつながっていきます。

8.「見える化」を効果的にするために

 「見える化」を効果的に使えば、改善が促進できることを見てきました。しかし、「見える化」だけでは問題は解決しないことも考慮する必要があります。「問題の見える化」から、解決策を考え、実行して初めて効果が上がるのです。
「見える化」では、目的を明確化し、「見せたくないもの」ほど「見える化」することが重要です。
しかし、見える化により、問題点の原因が個人攻撃に結びつく危険性もあります。「見える化」は効率のよい、よりよい職場にする手法であると考える職場風土の醸成が必要になります。

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