シリーズ 「製本企業は、いかにして経営改善を行い、生き残りを計っていけばよいか」

製本業を取り巻く厳しい外部環境の変化に柔軟に対応していくためには、現在の自社の現状を的確に把握していなければなりません。

規模の大小を問わず経営者は経営課題を持っており、こうありたいという「社長の思い」を強く抱いています。経営改善を効果的に行うためには現状を正確に把握し、的確な目標を設定することが重要です。目標を達成するために、経営者と現場が知恵を出し合って問題を解決していく仕組みが必要になります。「見える化」はその一つの仕組みになります。

財務、顧客、従業員等について、具体的、定量的に現状を把握することが、「見える化」の最初のステップになり、「経営課題」への「気づき」になります。
「見える化」を推進するためにITは有力な道具です。

製本受注の多品種・小ロット・短納期化により、勘による経営が限界を迎えています。ITをうまく取り入れて、企業の身の丈にあったシステム(企業の必要度に適応したシステム)を活用することが必要になってきています。また、システムを有効活用するためには、社長のリーダーシップと全社員の協力が必要です。計画の実行段階では、種々な問題が起ってきます。
経営改善のために、現場で「見える化」を推進し、現場力を高め、発生する問題を迅速に解決していく組織能力を高めていきます。

本シリーズは生産管理、販売管理、雇用管理などの主要フェーズで「見える化」をどのように取り入れていったらよいかを5回に亘り、有効なIT活用の事例をあげて説明していきます。
また、すでにITを活用している企業にも参考となるように内容を構成しました。

小山コンサルティング事務所 小山武夫 <中小企業診断士・技術士(経営工学)>
ピー・エス・シー株式会社 原田敏明 <中小企業診断士・ITコーディネータ>
第1回 「経営改善で生き残りをかける」
第2回 「見える化」で生産の効率化を図る 
第3回 「見える化」で生産の効率化を図る
第4回 営業の強化で顧客満足を達成する
第5回 人の力を最大限に発揮する

Posted in 経営管理 | コメントは受け付けていません。

第1回 「経営改善で生き残りをかける」

1.見える化で経営力を強化する
製本業は、情報のデジタル化、メディアの多様化、受注単価の低下、取引先企業の製本内製化、顧客の海外移転など厳しい経営環境にあります。
いま経営の改革が必要とされるのは、先の見通しが立たず、過去の経験則が通じない不透明の時代に突入しているからです。
 先が見えないのであればそれを見るための目とそれを補助する道具が必要になります。「見える化」が重要になっているのは先が見えない時代だからです。
経営改善の第一歩は自社の経営状態を把握し、問題点を抽出し、改善計画を立てて実行していくことです。
あなたの会社では、必要な時、必要なデータが把握できるようになっているでしょうか。
経営状態を把握するためには様々な情報が必要になります。多くの情報を迅速に的確にいつでも取り出せ、社員に伝達するシステムが必要になります。経営改善に必要な多くのデータを一元的に管理するためにはITを活用するしかないのです。多くの会社でデータはあるが有効活用されていない事例を見かけます。ITにより、データ管理が容易に行えるようになり、経営改善のスピードが向上します。
経営改善に有効なシステムを持ち、変革の時代を生き抜く企業の要件は次のものとなります。
① 顧客が魅力を感ずる「強み」を持つ
② 自社の強みを発揮できる顧客とのネットワークを組んでいる
③ 経営環境変化に適応でき組織体制、システムを持つ
これらの要件を達成するために、経営課題を迅速に把握し実践に移していくことが重要です。迅速に情報を入手し課題を的確に把握するためには、ITの活用が不可欠になっています。

2.経営改善で「社長の思い」を達成する
 企業が競争他社と製品・技術などで差別化し、優位性を保つために「競争戦略」が必要になります。これが「社長の思い」であり「企業の生き残り策」になります。この「社長の思いを実現していくのが「組織」です。社員一丸となって目標を達成するために全力を傾注する「組織力」が必要になります。経営者は、企業が向かうべき方向を明確に打ち出し、「社長の思い」と「組織力」を一致させて、目標を達成していきます。この組織力を構築していくのが経営者のリーダーシップです。組織力の高い企業は、社員が「社長の思い」を十分把握・理解し、よりよい具体策を決めて実行していき、実行段階で起こった様々な問題点を短期間で解決していきます。
 組織力を高めるためには、社員全員が問題点を共有し、ひとつの目標に向かって全力を注げる体制を構築することです。必要な情報を必要な時に迅速に収集でき、社員にその情報を迅速に伝達し、全員が「情報の共有化」ができていることです。これが「現場の見える化」になります。受注から出荷までのすべての工程で「見える化」を推進することで、組織としての情報の共有化ができるようになります。これを手助けするのが「情報システム」です。
 従来のシステムは高価で一度導入してしまうと手直しが難しく、IT投資は無駄であると思っている経営者もいます。現在はIT技術の進歩が目覚ましく、今までよりはるかに安価なシステムが出ており、企業の必要性に応じたシステムを容易に導入することが可能になってきています。

3.企業のレベルに適応したシステムで生き残る
IT経営は、経営者のレベルに応じて活用していくことができます。受発注から出荷までの製本業務を管理することができ、さらに、売掛金管理、採算を見るための原価管理、財務会計、給与計算など会社に関するすべてのデータを一括管理することができます。「社長の思い」の実現のために企業の状況に応じてできることからIT化していくことが重要です。

(1)IT経営を「知らない」経営者
 ITの必要性を認識していない経営者です。いまやインターネットを使っていない企業はありません。ITがなくても不自由しないと思っている経営者はいません。ただ、従来のやり方を変える余裕がなく「社長の思い」が実行に移されていないだけです。受発注の業務でもITは不可欠です。伝票のIT化はほとんどの企業が活用しています。
最初は「事務の合理化」からIT化を始めましょう。今までは残業が発生していた業務が、定時内で簡単に処理できるようになります。
(A社の事例)
A社は、教科書や学参書の製本を主に扱っており、受注が繁忙期に集中する傾向があります。IT導入前は、作業指示書から、納品書、請求書発行に至るまですべて手書きで行っていました。作業指示書に書いた品名を、納品書や請求書に何度も記入するため、二重・三重の手間がかかるだけでなく、記入ミスの要因ともなっていました。請求締め日が近づくと請求業務でてんやわんやとなり請求漏れが発生したり、他の仕事に目が行き届かなくミスが出るなど、トラブルにつながることも多くありました。
製本管理システムの導入により、データの一元化が実現し、受注情報と売上を入力するだけですべての帳票が自動で印刷されるようになり、事務のミスが激減しました。
そして、請求締め日に集中する事務量が大幅に減少し、締め日前後の残業とストレスから解放されました。

(2)IT化をためらう経営者
 IT化を検討したが「金がかかる割に効果がない」とITへの投資をためらっている経営者です。このような経営者は「社長の思い」を明確化し、「自社のあるべき姿」を明確に描いてみましょう。「自社の現状の姿」と対比し何をすれば「あるべき姿」になるかを具体的に計画してみます。その計画実現のために「見える化」が必要で、IT化が大きな役割を担っていることが分かるはずです。
 担当者が自ら「社長の思い」を実現できる計画(作業計画)の策定に参加し、責任をもって行動する必要があります。また、計画と実績を対比して、問題があれば対策を講じます。この計画と実績の対比のためのデータが保管されているのがパソコンです。必要に応じてデータを引き出し「見える化」を行っていきます。

(B社の事例)
B社は、創業40年以上の歴史を有する製本企業です。社長を含めた従業者数は4人と小規模ながら、全工程一貫生産を強みとしています。同社の設備は、中綴じ・無線綴じ各1ラインの他、折り機、断裁機、穴開け機を有しています。
また、他社でやりたがらない薄物の無線綴じを独自の方法で品質を作り込み、積極的に受注活動を行っています。
小規模企業においては、社長も現場に入り働いていることが常態化しています。この実態を踏まえて、必要機能を絞り込み、データ入力の許容負荷と最大の導入効果を目指してIT化しました。
まず、最小限必要な「現預金の出納管理」「請求書管理」をIT化し、次に、一歩進んで「製本予定表作成機能」を組み込みました。
そして、老朽化していたFAXを廃棄して、価格・性能比の優れたA4サイズのFAX・プリンタのカラー複合機を設備しました。
仕事の流れは、受注と同時に作業指示書を発行し現場に配布します。また、受注時に刷り本の搬入予定日と納期を入力するので従来手書きで作成していた予定表が、品種や搬入日により自動的に色分けされて出力されます。カラー指定は、システム側で必要な帳票のみとし、それ以外の帳票はモノクロに設定することによりランニングコストを抑えて運用しています。
B社では、一元化されたシステムの導入により手書きで行っていた作業がほとんどなくなり、データ管理体制は整いました。今まで、取られていたムダな時間を、生産設備強化や新しい加工方法、関連業界の市場動向などの情報収集に振り向け、営業戦略策定に充てることができるようになりました。

(3)「拒絶」経営者
 「IT投資を積極的に行ってきたが、投資効果が発揮できない。」「IT投資は現状で十分である」というIT投資に消極的な経営者です。「社長の思い」は明確ですが、「自社のあるべき姿」が明確になっていない場合です。導入したシステムの柔軟性と拡張性が不足していたのです。誰でも使え、「見える化」の範囲を広げようとしてもそれに対応できるシステムにならなかったのです。ITの進歩で安価で柔軟性と拡張性を兼ね備えたシステムが利用できるようになってきています。

(C社の事例)
 C社は、一般向けの管理ソフトをいくつか使用していました。製本工程は複雑で、前工程の遅れや刷り直し等により頻繁に作業予定を組み替える必要があります。一般管理ソフトはこのような作業変更に対応できなかったため、せっかく入力した製本データを一元的に流用したり活用したりすることが難しく、メリットがほとんど発揮できない状況でした。また、検索機能が不十分でパソコン上にある有効データを活用できないでいました。
製本に特化した製本管理システムを導入することで、これらの悩みは解消されました。部材搬入チェック表、折・貼込み手配表、配車予定表、受注伝票、納期一覧表、週間作業予定表、進捗一覧表、分納納品書などの生産管理諸表が必要に応じて簡単に手元に引き出せるようになりました。
「表紙の入荷枚数はいくらか」「カバー・スリップは入っているか」などで倉庫や刷本置き場、機械周りを走り回り、下請け外注に電話連絡する、といった作業のムダを軽減することができるようになりました。このように今まで簡単に見えなかったものが、見えることによって、現場と営業・管理とのコミニュケーションコストが削減されるだけでなく、円滑な進行管理が可能になりました。この進捗情報の「見える化」により納期遅れ・作業ミスなどのトラブル件数が80%削減されました。

(4)「積極」経営者
 「IT無しでは仕事にならない」「IT活用はまだまだ」という経営者です。時代の変化に適応したシステムを導入し、ITによる経営改革を実施しており、「経営スピードの向上」「経営状況の見える化」「経営データ活用の高度化」を実践しています。営業業務、生産業務、経理業務のすべてで「見える化」を行っています。
 「経営データの高度化」を営業、生産、外注、出荷、在庫のすべての工程で行っています。生産面では、顧客ニーズの細分化に伴い生産種別コスト管理を行い、顧客の要求に応じて原価管理の精度を高めています。
納期管理は生産や外注の状況について受注ロット別に作業工程管理表で毎日把握し、対策をとっています。
売上管理では、顧客別、品目別など売上動向を定期的に分析し、変化が起った時の要因を把握し対策を立てています。顧客の受注別採算管理を精緻化しています。
 
(D社の事例)
 従業員数40人規模のD社では、顧客別採算管理を実施しています。
受注番号別に売上から人件費・運賃・外注費を差し引いた金額の少ない順、1冊当り単価の低い順に並べて見ることにより、マイナス受注が浮き彫りになります。
経営者や管理者は、粗利額や1冊当りの単価の低い受注はどのような品物で、どの顧客のものが、採算がとれていないか、その理由はなにかと注意を喚起でき、早期の対策を講じることができます。また、顧客別の採算が常に見えるため、迅速に営業戦略を見直すことができます。
また、工程や進捗の「見える化」により納期遅れや作業ミス防止だけでなく、今まで見えなかった情報を「見える化」することにより、社員の納期意識・コスト意識向上にもつながりました。

Posted in 経営管理 | コメントは受け付けていません。

第2回 「見える化」で生産の効率化を図る(戦略と生産計画・進捗管理の見える化を推進する)

1.「社長の思い」を「見える化」する

 「社長の思い」は、「現在の姿」から「こうありたい姿」に改善していくことであり、これがビジョン・戦略になります。「将来このようになりたい」「こうすれば他社と差別化できる」という思いです。「社長の思い」を実現していくためには、この思いを全社に浸透していく必要があります。
全日本製本工業組合連合会では、平成20年に、製本業中期振興ビジョンとして、新しい製本業の確立と成長を目指して五年、十年先を見据えた指針を示しています。製本業は従来の「請負型モデル」から、「川上ワンストップ型」「川下ワンストップ型」高度専門型」「商品・技術開発型」「製本コディネート型」「製本業務受託型」「企業連携型」「デジタル技術活用型」へと変革をしていくことが必要であるとしています。社長の思いを実現するために、企業の実情や経営環境に適した型を選んで自社のビジョンにしていくことが肝要です。
この五年、十年先のビジョンが決まれば、次に二~三年後の戦略マップを作成します。これは変革を実現するための実行計画です。
図の戦略マップは、「バランススコアカード」で描いた具体的な戦略マップの例です。社長の思いを実現する「売上の拡大」を実現するために顧客の視点を考え、業務プロセスを改善し、人材育成と変革を目指していきます。
この戦略マップを社員全員に周知させ、将来ビジョンを全員が共有できるようにしていきます。
経営改善は「戦略策定→実行→検証」の繰り返しになります。
計画が実行できているかどうかを検証するためには現場で実践したデータを収集し分析する必要があります。データを見て計画通りいかないときは戦略の見直しが必要になります。業績データが「見える化」されていれば、改善点がいろいろあることに気づくものです。全員が気づくシステムの構築が必要になります。このシステムを現場で徹底したのがトヨタの「KAIZEN」です。

「重要成功要因の見える化」

社長の思いを実現する戦略をどのように実行していけばよいのかを考えます。どのようにしたらよいのかは全員で議論をしていく必要があります。そして重要成功要因の業績評価指標を決定します。
業績評価指標は重要成功要因が計画通りに実行できているかどうかを客観的、定量的に確認するための指標です。
財務の視点で重要成功要因の業績評価指標を売上高増加率とする場合は、売上高の前年同月比をグラフ化して貼り出します。

2.生産計画の「見える化」でムダをなくす

経営戦略(「社長の思い」)を戦略マップに落とし込み、具体的な実行計画を作成します。受注産業だからといってなりゆき任せでは行き詰ります。受注計画を作り空きを埋めていく営業努力が必要です。計画(受注予測)と引合い・受注の差異を「見える化」することにより、営業目標や要員計画に対し、早めの対策を講じることができます。製本全体の需要が減少していくなか、小ロット・短納期の受注の比率が増加しています。受注量の変動が大きく、限られた生産設備では、仲間仕事に回したり、場合によっては受注を断ったり、また受注が少なく手待ちになることがあります。納期だけを考えて作業スケジュールを組めば残業や手待ちで余分なコストがかかってきます。人、設備、材料を最も効率よく活用できる作業方法で、顧客のニーズに適った品質、コスト、納期を満たす必要があります。

生産を効率的に行うためには生産能力に近い生産を続けていくことが重要です。共有部品がある手帳製本等では、生産の平準化を行うために年間を通した粗い生産計画を立てることができます。一般の書籍製本や商業印刷製本でもできるだけ生産計画の平準化のため三カ月計画(大日程計画)、月次計画(中日程計画)、日程計画(小日程計画)のように段階的に連動した計画を可能な範囲で作成します。大日程計画は過年度の生産情報と現在の引合い情報に基づいて作成します。
タイムスパンは1カ月、週間、日別など、各社の実態に合ったものを採り入れます。

大日程計画は、現状でどの程度の生産量があるかを把握し、要員計画と外注計画を見直していくために重要です。過去の受注ロット単位の出来高を月別に集計した生産量をもとに、予測した伸び率を掛けて計画とします。
ただ、飛び込みの多い製本業界では「先の受注をどう読むのか」「注文の多様化に対応した生産量(負荷)をどう読むか」が問題になります。負荷の見積もりはある程度の粗さがあってもかまいません。大日程計画で生産の平準化を行っていくのが目的です。
この負荷を算出するために実績と計画の差を把握できるシステムが有効です。

3.工程別生産能力を把握し、計画と調整する

 生産を平準化するためには、各工程(機械)の負荷(生産能力)を知っておく必要があります。理論的には工程別の単位時間当たりの生産量から生産能力を算出しますが、製本では工程が多岐にわたるだけでなく工程の組み合わせが多いので、実績から推定していきます。受注ロットを生産に必要な時間で分けていけば、大きく5つぐらいのパターンに分けられるのではないでしょうか。過去の実績のデータを用いてそれぞれのパターンでの生産時間を決定します。5つのパターンの受注量を想定して、生産能力を決定します。
 工程別負荷ができれば、人員を加えた生産能力を算出します。
 生産能力(人員、機械)=1ヶ月の稼働日数×1日平均実働時間×稼働率×人員数(台数)
ただし、稼働率は、人ベースでは[出勤率×(直接作業率)]で、機械ベースは[機械が処理している時間]を用います。
段取り、運搬などで機械が動かせない作業は間接作業率で直接作業率から除外します。
いずれにしても、やり方は1つではなく、自社の業務ワークフローに基づき、実態に即した管理方法を採用するしかありません。

詳細な稼働日報データを入力できる人的余裕のある会社では、蓄積された稼働データをもとに工程別生産実績や製品別工程別生産実績を指定期間(年、四半期、月、週、日)で集計し工程別の負荷分析を行い、現状要員での生産
能力を算出します。
また、書籍製本の場合、無線綴じラインの管理のみをシステム化し、前工程の断裁・折り・貼り、後工程のトライオート・手仕事などの仕上げ工程や、別冊などの中綴じ工程は、指定期間の件数と部数のみを工程別ボリュームチェック表に集計し、工程別の生産量を把握する方法をとることができます。

4.基準日程表を活用する

 月単位の計画の生産量(負荷)と生産能力をもとにして週間計画、日程計画を具体的に決定します。基準日程表を作るためには、生産能力と今までの作業実績をきちんと調べておく必要があります。生産計画と総負荷が算出されれば、この両方を比較して検討を行います。
製本業は下請けが多く、特急の受注など短納期対応が必要になります。受注する内容が多様化し、煩雑になってきています。自社がどの程度の生産能力があり、どの程度の注文が受けられるかを把握しておき、前倒しで計画していくことが必要です。仕事の負荷と能力に差がある場合の調整は次の方法で行います。
① 残業・休日出勤などで能力を増大させる
② 多能工化により人員の不足している職場に応援を出す
③ 作業日程をずらし、一部の仕事を後回しにする
④ 仕事の一部を仲間仕事や下請けに出す
⑤ パートタイマーを活用する
⑥ 新規計画として、人員や機械設備の増加を計画する
生産量の不足は残業で処理する場合が多いのではないでしょうか。残業がやむをえないものであるか、無駄な残業であるかは、生産能力を正確につかんでいれば判断できます。生産能力が「見える化」されていれば、どのような方法で短納期に対応するかが見えてきます。
また、長期計画を考えるためにも生産量と生産能力の把握は重要です。

5.標準化で多品種少量生産の効率を高める

多品種少量生産を効率化するために標準化が必要になります。標準化するためには基準が必要です。まず、基準を作り、実施し、基準を評価し、基準の見直しをしていきます。基準は企画やマニュアルで文書化されたものです。標準化は多品種を工程別に整理し、同じような工程は一つにまとめて標準を作っていきます。工程別生産能力で用いた顧客の受注を生産時間で大きく5つぐらいのパターンに区分するのも一つの方法です。例えば、工程をこの5種類に限定し統一し、規格を定めて使用の基準を示します。
標準化には方法の標準化と作業の標準化があります。
方法の標準化は、作業のやり方を標準化して作業標準という形にします。通常は作業マニュアルが方法の標準になります。
作業の標準化は作業のやり方を標準化して作業標準の形にします。作業標準の作成には、現状の作業のやり方を把握し、改善すべき点を指摘し、どのやり方が最も効率的かを考えて決定していきます。作業標準は受注内容により変わってきます。常に内容を更新していく必要があります。トヨタなど大手はこのような作業標準の変更を頻繁に継続的に行ってよりよい作業標準を目指していく習慣が身についています。標準化は、多品種少量生産を少品種多量生産に近付けることになります。標準化により、生産計画や生産統制が容易になります。

6.多能化でコストダウンを図る

 標準化を効果的にするために多能化が必要です。製本は工程が多く、人員の不足している工程が必ず発生します。一人の人が複数の仕事をこなす多能化により、効率のよい生産が可能になります。製本工程には忙しい工程と暇な工程が必ず発生します。多能化により作業の平準化を図っていきます。不足している作業の応援を行い、作業が滞らなくするのが多能化です。これが作業の平準化につながります。
これは、効率的な人員配置によるコストダウンにつながっていきます。
多能化、標準化により、段取り替え、運搬作業の時間を短縮して、小ロットを頻繁に行える生産体制を確立することが、多品種少量生産の効率を上げる重要な手段となります。

7.「目で見る管理」で計画の進捗状況を把握する

コンピュータシステムは、一定の制約条件の中で生産計画を策定することや、進捗情報などを伝達することができます。
しかし、計画と実績の差異を修復したり、発生する諸問題を解決するのは、管理者や現場担当者の仕事になります。計画は立てただけではなく、現状とのギャップを「見える化」し、異常の早期に対策をとっていくことが重要です。計画に対してどのような進捗状況なのかを図表やグラフで示し、計画と実績のギャップを「見える」ようにすることが「目で見る管理」の効果的な方法となります。
E社は生産計画達成率のグラフを作成して現場に貼りだした。
生産現場全員が業績に関心を持ち、現状を把握することで改善点を見つけ出す習慣をつけることが狙いであります。さらに、数字で話をする習慣をつけることで、大目標と小目標の関係を把握し、会社の業績向上に結び付けられる「人の育成を図る」ことも目標になります。


F社は、計画日程表を「見える化」するだけでなく、作業の進捗状況が逐一計画日程表上に表示され、どの工程が予定通り進み、どの工程が遅れているかがわかるようなチャートを現場に提示しています。
「見える化」によって管理者と現場担当者の間で情報が共有され、情報の伝達漏れ、伝達ミスによる工程遅延や納期遅延などが未然に防止され、円滑な業務進行に役立ちます

Posted in 経営管理 | コメントは受け付けていません。